鍋の上で肉がそびえ立つ。
十和田名物、バラ焼きである。
まず弱火に点火し、玉ねぎだけを同方向に回しながら炒めていく(店員曰く、流れるプールの要領でと)。
玉ねぎがしんなりしてきたら、火を強め一気に牛バラ肉を焼いていく。
割下がなくなってきたら完成だ。
一枚食べると、猛烈にご飯が恋しくなった。
そりゃそうである。
牛脂の甘みに玉ねぎの甘みと割下の甘辛味が相乗して、これは白いご飯以外何があるかという味である。
店内見渡せば、全員が白ご飯をかきこんでいる。
しかし私はプロ? である。
安易に本能の欲求には従って、ご飯は頼まない。
あえて、うどんと生卵を注文した。
箸休めにと頼んだ、ねぎ焼きがいい。
十和田産ネギで、緑と白の部分がくっきりと分かれているため、「ボケ知らず」という名いるという。
甘い。噛めばおねばがにゅるりと飛び出して、あまい。
さあうどんが来た。
肉を二片、ネギを二個、玉ねぎ少々をこのために残しておいたのさ。
鍋にうどんを投入し、炒めていく。
白きうどんが、茶色く変色するまで炒めていく。
そして生卵につけるのさ。ふふ。
満腹で店を出ようとする僕の背中に店員が声をかけた。
「ありがとうございました。ラビアンローズ! バラ色の人生を!」